先日は、とあるアンサンブルのレッスンでした。

曲が難しいと演奏がぐちゃぐちゃになり、テンポも乱れて次のセクションに入るきっかけをつかみきれないということが起こりました。具体的には、リズム・セクションによるアレンジされたイントロが難しくて、ホーン・セクションが入れないというものでした。

以下、メンバーが一所懸命努力していること、とはいえなかなか正確に演奏することが難しいという状況を前提に、どのように解決したらよいかを書いていきたいと思います。

やってはいけないこと

結論から書きます。この文章のタイトルの通り、人の音を聴いてテンポを合わせてはいけません。

「他人に合わせてはいけない」理由

ジャズのアンサンブルにおけるテンポは、メロディと伴奏、あるいは、歌やホーン・セクションやリズム・セクションにかかわらず、全員が等しく責任をもつべきものです。

例えば、永遠に「あいこ」が続くじゃんけんをするとき、誰かにあわせているわけではありません。もし、特定の誰かの声、あるいは全体の声を聴いてあわせたとすれば、その人だけ「遅出し」になってしまうでしょう。あるいは、お神輿を担ぐようなときにも同様なことがいえます。周囲の掛け声や動きをいちいち確認しているようでは、そこだけぎこちない動きになるのではないでしょうか。

じゃんけんをするとき、あるいは神輿を担ぐとき、そこに発生しているテンポに対して、結果的に皆がどのように合っていくかを考えるとジャズのアンサンブルのテンポ・キーピングについて少し理解できると思います。

つまり、全体のテンポは聞こえている状態ですが、聞きに行っているわけではありません。つまり、ほかのことをやめて意識して聞き取ったものに合わせているのではなく、耳に入ってくるものからテンポを感じながら、それに対して自ずと同期させているといえるでしょう。

もし、ジャズのアンサンブル中に自分からは一切テンポを出さず周囲に合わせるということは、お神輿の例でいえば、一人だけ担がずにぶら下がっているようなもので、周囲には非常に負担がかかって文字通り「足を引っ張られる」ような状況になり、アンサンブル全体がぎこちないものになります。

重要なことはメンバー全員がテンポを発信すること

では、ジャズのアンサンブルではどうしたらよいでしょう。

じゃんけんをするときも、お神輿を担ぐときも、全体のリズムを感じつつも、自分で声を出して、そして、お神輿では体の動きで、そのリズムを自分でも発信していることに気づくでしょう。つまり、テンポは誰かが出してくれるものと考えて受け身になるのではなく、その場にいる全員がそれぞれ自分のリズムを感じてそれを能動的に表現する必要があるのです。

パートやアレンジによっては、数小節単位の長い休符がある場合もあるでしょう。しかし、カウントが始まって自分が入るまでの間も、ただ聴いているだけで漠然と入るところまで漠然と待つのではなく、より積極的に曲のテンポを常に感じていることが必要です。

よく「休符を演奏する」ということがあります。休符では音を出すことはありません。しかし、その間、じゃんけんやお神輿の集団から離脱しているわけではありませんから、たとえ楽器の音や動きがなくても、意識の中では能動的にテンポを発信(発振?)している必要があるのです。

まとめ

人の音を聴いてテンポを合わせるのではなく、演奏中は常に、自分のパートが長い休符のときも含めて、自分の意識のなかで常にテンポを発信(発振)し続ける必要があります。

自分のことを振り返りつつ、初心者がやりがちなことをまとめてみます。

  • リズム・セクションが、メロディやソロを聴いてテンポを合わせること。
  • メロディやソロを演奏する人が、リズム・セクションを聴いてテンポを合わせること。
  • リズム・セクションのなかでも、例えば、ドラムがベースに合わせたり、逆にベースがドラムに合わせたり、ピアノに合わせたりピアノが合わせたりすることも含め、誰かが誰か(あるいは周囲)に対してリズムを合わせること。
  • ホーン・セクションのなかにおいても、誰かが誰か(主にリード)または漠然と周囲のリズムを聴いて合わせること。
  • 長い休符の際に、自身のテンポの発信(発振)をやめて、直前のきっかけだけを頼りに入ろうとすること。

ほかにもあるかもしれませんが、代表的なものはだいたいこのようなことだと思われます。

これらはどれもやってはいけないことです。たいていテンポは遅れがちになり、全体のサウンドの輪郭も曖昧なものになります。

特にビッグ・バンドのホーン・セクションの2番以下の初心者は、間違えて飛び出さないように無意識に聴いてから合わせようとします。他人に迷惑をかけないための心がけかもしれませんが、かえって足を引っ張る結果になっています。

「間違えないように」「走らないように/遅れないように」と否定形(「〜ない」)で考えるのではなく、「責任を果たそう」「スウィングさせよう」と能動的に考えることが極めて重要だと考えます。

テンポに対しては、アンサンブルの全員が等しく責任を持つ必要があります。こころあたりのある方は今すぐ見直しましょう。

ちなみに、先日のアンサンブルでこのお話をした直後から、入るきっかけを見失うという状況が一切なくなったということも申し上げておきます。